耳鼻咽喉・頭頸部外科 柴田新教授

2025年11月1日、三重大学病院の耳鼻咽喉・頭頸部外科に新教授が就任しました。
「抱負は?」との質問に対して一番に挙がったのは、エキスパートの医師を育成すること。医師不足が深刻だとする三重県の耳鼻咽喉・頭頸部外科領域の医療を未来にわたって守り、質を高めていくために、日々の診療はもちろん、布石としての取り組みにも熱い想いがあるようです。
それ行け!三重大学病院。それ行け!柴田博史 耳鼻咽喉・頭頸部外科新教授。これから先も患者さんが納得のいく高いレベルの治療を安全に受けられる体制づくりのために。

耳鼻咽喉・頭頸部外科
科長・教授柴田博史

まずは、耳鼻咽喉・頭頸部外科の科長および教授就任に際しての抱負をお聞かせください。

はじめまして。2025年11月に三重大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の教授に就任しました柴田博史と申します。三重県の地域医療に貢献できるよう、特に患者さん自身が納得のいく高いレベルの治療を安全に受けられるように、精一杯がんばる所存ですのでどうぞよろしくお願いいたします。

耳鼻咽喉・頭頸部外科は、聴覚、嗅覚、味覚、呼吸、食べる、話すなど、生きるための機能に直結する耳、鼻、咽頭喉頭、頭頸部の領域を対象としていて、手術治療ではこれらの機能と病気の根治性のバランスを常に考えた治療が求められます。

これを前提に、私の抱負としては、まず三重県の地域医療を守るために耳鼻咽喉・頭頸部外科の各領域のエキスパートとなる医師を育成することです。

同時に、三重大学病院は三重県の医療における最後の砦ですので、難治疾患に対してもしっかりと対応できるような体制を維持・強化します。

さらに、臨床・基礎研究を推進し、三重大学で得た知見を日本、世界に発信できる活気のある医局を目指していきます。

そうした抱負を胸に、特に力を入れていきたいことはありますか。

三重県は耳鼻科の医師不足が明らかで、危機的な状況です。私の試算では、県内人口の耳鼻科疾患に対応できる医療体制を維持しようとすると、少なくとも後30人の耳鼻咽喉科や頭頸部外科の医師が必要です。

したがって、まずは耳鼻科の魅力を学生さん、研修医の先生方にアピールし、若い耳鼻科医を増やしていくことが急務だと考えています。

将来の耳鼻科医候補に向け、特にどんな魅力を伝えていきたいですか。

耳鼻科は中耳炎、扁桃炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など身近な病気に対応する親しみのある科である一方、当院のような急性期病院では、再建手術を要する頭頸部がん手術、鼻内内視鏡を用いた頭蓋底手術、人工内耳の手術など高度な経験と技術を要する治療も数多く行います。

このように耳鼻科には様々な領域があるため、若い先生方も自分の得意とする専門領域を見つけやすいと思います。

それでいて、耳鼻科は比較的ワークライフバランスが取りやすい科でもあります。

医師の働き方改革が言われて久しいですが、専門性を伸ばすべき時期に出産や子育てのコアタイムが重なることが多い女性医師を含め、個人ごとの事情に配慮したキャリアプランの構築ができるように、やる気と能力を最大限活かす方策に取り組んでいきます。

また、私は世界中に様々な得意分野を持つ耳鼻科のエキスパートの先生方とつながりがあるので、それも活かして若い先生方のキャリア支援をしていきたいと思います。

「日本一の耳鼻咽喉・頭頸部外科教室をつくることが私の夢です」

将来の医療は今日の人材育成の先にあり、ですね。

はい。専門分野が多く、奥深く、楽しく働ける分野であると確信しています。

三重大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科は、次世代を担う若い先生方の力を必要としています。
マイナー科といわれる特徴を活かして、手術はしたいけど私生活も大切にしたい、そんな若い力を募集します!

少しでも興味がある方がみえましたら、いつでも教授室まで気軽に遊びに来てください。

研究や教育における取り組みについてはどうでしょうか。

専門性をそれぞれに持った、日本一の耳鼻咽喉・頭頸部外科教室をつくることが私の夢です。

私自身は医学生のときに研究のことなど考えたこともありませんでしたが、その後の研究を通して世界の様々な新知見に触れたことや、尊敬できる多くの先生方や同僚との出会いは、自分の人生の考え方そのものを変える一大イベントにもなり、今もモチベーションになっています。

これからは私が経験したようなことを多くの若い先生方に少しずつでも体験してもらえる土壌を作って行きたいと考えています。

一方で、我々は三重県の医師ですから、地域の医療に貢献することが日々の最も大切な仕事です。Think globally, act locally(世界的な視野で考え、身近なところから行動しよう)」というキーワードを目標にして、耳鼻科の魅力をどんどんと伝えて行きたいと思っています。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科には多くの領域があるとのことでしたが、ご自身の研究テーマは何ですか。

私自身は、大学院時代には京都大学iPS細胞研究所に4年間国内留学をし、また医師10年目から2年間米国のハーバード大学に海外留学をして、一貫してがん、特に頭頸部がんの研究を続けてきました。

最近では、人類で最も悪性度の高いがんのひとつである甲状腺未分化がんのエピゲノム編集*による遺伝子治療、頭頸部がんの個別化免疫治療、また頭頸部の再生治療についての研究をしています。

研究を通して疾患をより深くまで理解し、結果に立脚した新規治療を提案することを常に考えています。臨床だけでなく、研究も面白いですよ!

*病気の原因となる遺伝子そのものではなく、遺伝子の使い方を変えることで治療する手法。

三重県とのご縁や印象は?

私は、岐阜市生まれで、岐阜大学出身ですが、実は私の妻が松阪市の嬉野町出身でよく来ていましたし、岐阜とは隣県であることもあり、三重県は親近感のあるところでした。

海なし県出身の私としては、近くに海があることが嬉しいです。そして、三重県の良いところは、とにかく食べ物が美味しいことです。

また、三重大学病院の職員の方は皆さんとても優しく親切な方ばかりで、患者さんにも穏やかな方が多い印象です。院内がとてもきれいに保たれており、病室も清潔で、医療スタッフにも患者さんにも優しい環境だと感じています。

冒頭で最後の砦としての抱負もありましたが、患者さんにもメッセージをお願いします。

私自身は頭頸部がんを専門としており、生命に直結するがん患者さんの手術や病状説明に関わることが多いです。

手術や治療には辛いこともありますが、なるべく患者さんに寄り添い悩みを共有し、最適な治療をぜひ一緒に考えていけたらと思っています。わからないことがあれば、なんでもお気軽にお聞きください。

耳鼻咽喉・頭頸部外科 科長・教授
柴田博史

中学のときからずっと水泳部に所属しており、岐阜大学医学部水泳部では主将を務めていました。水泳は生涯スポーツとしても最高で、今も週1回、長男をスイミングスクールに連れて行くついでに2キロ程度を泳いでいます。最近の休日はもっぱら次男(2歳)の子守りをしています。話せることが増えてきてとてもかわいいです。

この領域を専攻したのは、耳鼻科の開業医であった父親の影響が大きいです。子どもができると本当に日常の困りごとに役立つ科であることを実感します。アメリカに留学していたときには、現地は医療費が高いので、近所の子どもたちはちょっとしたことなら私のところにきていました。自分で治療した患者さんが元気になっていくのを見るのが好きで、患者さんを大切にする姿勢はこれからもずっと保っていきたいと考えています。

医療スタッフや事務職員、外部委託のスタッフを含め、三重大学病院の日々の運営に携わるのは、総勢約2500人。表から、裏から様々な形で関わるその一人ひとりの力や想いが、平常通りの診療を支えています。
安全な診療、優れた診療、質の高い診療、いずれも技術や設備だけでは成し遂げられません。
VOICEのコーナーでは、いろいろなスタッフの声を通して、三重大学病院の診療に欠かせない「人」としての側面をお伝えします。

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